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最近”腐”の道に進みつつある女子
マイペースに更新していきます。
これからはちまちま更新していきます。
とりあえず最初はジルライの長編の第一話です。
つづきからどうぞ
ライル=エルウッドは機嫌が悪かった。何故なら今日、あまり会いたくないと思っていた男が目の前に現れたからだ。
その男の名はジルベルト=ジーリ。ライルと同じくイエズス会士であり、諜報部隊の頭(かしら)役のような存在だった男である。
彼は何かとライルをいじくりまわし、事あるごとにからかってくる。いつも反応を返してしまうライルもライルだが彼を拒否しきれないでいたのも事実だ。
何故ならライルは彼の中にあるひとつの想いを知っていたから。
「なんでジルベルトなんだ!」
ライルは怒鳴っていた。
「だって、ジルさんは諜報部隊の中でも一番優秀なんですよ? ガルシア先輩も早く見つかると思いません?」
天使のような笑顔をライルの向け、アルドは爽やかに言った。
「それだけか? 本っ当にそれだけの理由か!!?」
幼馴染として何年も付き添っている彼は、何故ライルがジルベルトを嫌がるか知っている。それでいてジルベルトを選んだのはただ目的を果たすためだけではない。
――面白いからだ。
ライルは本当に見ていて飽きない。ころころとよく変わる表情、驚いたときの顔、その後の反応……。天性のいじられ役とも言えるかもしれない。
にこにこと笑っているだけのアルドから黒いものを感じ取ったライルは、机に突っ伏して喚いた。
「お前も知ってるだろ~!! あいつは、あいつは……」
「僕が何だって?」
頭上からの声に、ライルの体が音を立てて固まる。見るとライルの顔を問題の男が覗き込んでいた。
「ジル…ベルト……」
ライルの顔から血の気が失せていく。その人物は笑みを崩さず、ライルの横に腰を下ろした。
「嬉しいなぁ。僕の話題だったのかい?」
微妙な沈黙が周りを包む。
「じゃ、先輩。頑張ってください!」
「ひとりにするな~!!」
立ち上がるアルドの裾を掴み、ライルは叫んだ。
「僕これからマリエッタさんと打ち合わせしなきゃなんないんで」
そんな事を言っても影で見て笑っていること請け合いだ。ライルもそれを知ってかアルドを離そうとはしない。
と、ジルベルトがライルの首に手刀を入れた。呻いて机に倒れこむライル。ぐっと親指を立て笑う二人。
そしてアルドはそのまま奥へ消えていった。
気を失っているライルの顔を見つめ、ジルベルトはくすりと笑った。そして前髪を撫でると彼の頬に軽く、唇を当てる。
そうした後でライルを揺り起こす。
「ほ~ら。ライル起きろ~」
反応がないライルにジルベルトはデコピンをくらわす。
小さく呻いて彼は目を開けた。寝惚けた眼にジルベルトの姿が映る。
額を擦って何かを考えた後に、彼は勢いよくその場を離れた。
「おまっ…いっいっ……!!??」
指をさして戸惑うライルに、ジルベルトは優しく微笑んだまま見つめている。
「いっ、今、何をした!!?」
ようやく落ち着きを取り戻したライルは、それだけを言った。対してジルベルトは軽く笑って片手を挙げる。
「何にも?」
「嘘つけっ」
「してないってば。なんならこれからしてあげようか?」
そう言ってライルに近づいてくる。ライルは真っ赤になって手を振った。
「うわっ! いい! いいから来るな!!」
「もう遅いよ」
そう言ってジルベルトはライルの手を握った。
温かい。この温もりを感じるために、ジルベルトはここに来た。ライルがその先のヒトしか見ていなくても、ライルが心配でここに来た。
彼の親友、ガルシア=ルルスがいなくなった後のライルは酷かった。
落胆し、我武者羅に彼を捜した。
この二年間、ずっとガルシアを捜していた。まだ捜している。これからも、彼が見つかるまでずっと捜すだろう。自分がどんなになっても。
「ん……」
唇を重ね合わせる。ライルの肩がビクンと震える。逃れようとしてもがくけど、ジルベルトは離そうとしない。ジルベルトの手がライルの頭を抱きこんだ。
そのままふたりは倒れこんだ。ようやく、唇が離れる。
「――会いたかった」
不意にジルベルトが口を開いた。
「この二年、ずっと……」
ジルベルトの顔は影になって見えない。それでも、どんな顔をしているかライルは分った。
とても愛しそうな顔で自分を見ているに違いない。壊れそうなほど、辛そうな顔で。
倒れたまま、ジルベルトはライルを強く抱きこんだ。とても、強く、強く。
「まだ、ガルシアを捜すのか?」
「え?」
肩越しにジルベルトの顔を見ようとした。でも、頭しか見えなかった。
今は、どんな顔をしているのか分らない。
「イエズス会に戻ってくれば、いい仕事があるって話もあるぞ」
「…………」
「僕の諜報部隊に任せてくれれば、ガルシアはすぐに見つけられる」
「ふざけるな」
ライルは声を押し殺して言った。ジルベルトの体を押し戻す。
「ガルシアは俺が見つける。絶対にだ!」
そうでなければ意味がない。でなければ、この二年間が無意味なものになってしまう。
「ガルシアは俺が見つけ出す。そして、一番に理由を聞く。でないと……」
ライルはジルベルトから顔を逸らした。
彼が一番恐れているもの、それはガルシアの『死』だ。
ガルシアはそれ程までの罪を犯している。『神殺し』という。
「わかったよ」
ジルベルトはライルから離れた。
「それじゃあ、僕はライルの力になろう。僕がいないと、ライルが駄目になってしまう程の、ね」
服の乱れを直しながら、ジルベルトはライルに笑いかけた。
それは頼もしい反面、どこか悲しそうな笑みだった。
ジルベルトが去った後、ライルはため息を吐いた。
「なんで、拒めないんだ」
ジルベルトのことは同僚としか思っていない。
誰がなんと言おうと、ライルにとって彼は一緒に働くだけの存在なのだ。
だったらきっぱりと断り、力ずくでも抵抗すればいい。
なのに、できない。
おそらくそれはライルの過去に由来しているのだろう。
ライルはイギリス人を父親に持つということで、カトリック系の神学校では孤独だった。
周りを突っぱねて、いつも張り詰めていた。そこは悪意の塊でしかなかった。
ライルは独りの辛さを身をもってしったのだ。
だから、好意を持って寄ってくる人間は拒めない。
拒んだら、ライルを傷つけた人間と同じになるような気がしたのだ。
(何が原因でも、傷つけるのは同じだからな)
ライルはもう一度、ため息を吐いた。
(先が思いやられる……)
げんなりした顔で立ち上がると、少し固まった筋肉をほぐした。
夕暮れが近づいてきている。
そろそろ夕飯の買出しに行っておいたほうが良いだろう。
「その前に、あの腹黒魔人をしばかないと」
《 終 》