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神無月 夕弥
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プー子
自己紹介:
晴れの国在住。
最近”腐”の道に進みつつある女子
マイペースに更新していきます。
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2010/05/27 (Thu)
ずっとありながらずっと記事数0というよろずの学園編をようやく載せます。

まあ、なんて言うか、書いてたのは書いてたんだけどね。
話ごとにタイトルつけるの実は苦手で^^;
これは脈絡もなくずっと続くのでどう区切ろうか悩んでたんですよ。

で、このお話ですが、CPはノマカプです。
一応正式カプを書いておきますと。

・リタ→ライル×薙刃
・神無×迅伐

ですかね。

リタとライルと薙刃の組み合わせはもぉドロドロです。
てかライルが美形で文武両道で女子にモテる設定なので。
神無×迅伐はほのぼの系でしょうか。
で、これ書き始めた頃は私まだ純粋で。
BL? なにそれ美味しいの?
って感じだったので。
正統派ラブストーリーです。
でも
目覚めてから考えた

・ジル×ライル

とか

・ガル×ライル

とか
入るかもしれないです。
あときっとリタが腐女子なんだ。


って、な訳で!続きからどうぞ!



 

[1]
 




4月の吉日。今年は暖冬で桜はすでに散っている。しかしそこに桜が咲いているような少女がひとり。桃色の髪と瞳を持ち、元気で溢れている大きな笑顔。彼女の名は、勾(こう) 薙刃(なぎは)と言った。
 一歩、また一歩と足を踏む出す中に、これからの生活への期待が見て取れるようにわかる。
ここ、私立天正学院高等学校は公立並みの授業料に加え進学率も高いという全国有数の人気校である。当然、人気ということは倍率は高い。この少女からすれば、少し狙いどころとしては上になる。
 しかし今から約一年前、経済的な理由もあり私立はここでしかだめだということで彼女は猛勉強を始めた。兄の神無(かんな)も同じく中学三年生のときにこの高校に行くため勉強を開始した。
「長かったよ……」
 思わず感嘆の声が漏れる。二ヶ月前の入試の日、この校舎はとても高く見えた。これからはこの校舎での生活が始るのだ。
 薙刃は鏡を取り出し身だしなみをチェックした。
 髪は乱れなし。目元にも何もついていない。制服のスカートの丈は少し短くしているけど、特にバレはしないだろう。バレたとしても自由な校風の学校だ。多分注意されるだけだ。
「よしっ、行くよ」
 意気込みを声で露にした時、入学式開始を告げるベルがなった。
 そこで自分は実は遅刻してきたことを思い出す。受付時間もとっくに過ぎている。彼女の背に冷たい汗が流れた。
「や、やばい……っ!」
 急いで校門をくぐり、駆けていく。目指すは体育館、おそらく先生の一人は外に立っているだろう。
 この角を曲がれば後は一直線となるところで、いきなり黄色い頭が飛び出してきた。
「わっわわっ!」
 勢いがついていたのと気がつかなかったので思い切り彼の胸にぶつかってしまう。
 互いに尻餅をつく。先輩と思われる男子生徒は額に手を当て軽く呻く。
 謝ろうと思い、彼を見ると思わず言葉が止まってしまった。
 金色の柔らかそうな髪。青空を思わせるような曇りのないブルーアイ。男としては少し線の細い、しかし十分に存在感のある身体。
 薙刃は暫くの間、彼の美貌に目を奪われていた。
「おい」
 薄い唇から言葉が漏れる。その声も彼女の耳には心地良かった。
 反応のない薙刃に、少し戸惑ったように彼は呼びかける。
「おい、大丈夫か?」
 自分の口がまるで他人のもののようだった。ただ、瞳は彼の姿に釘付けになっている。
 
――パン!

 いきなり猫だましをされてしまった。乾いた音で我に返る。
「気がついたか?」
 彼は苦笑気味に立ち上がった。続いて手を差し伸べてくる。
「あ、大丈夫です!」
 恥ずかしさとトキメキで顔を紅くしながら薙刃はばねのように立ち上がった。
「お前、新入生だよな?」
「はい!」
「もう入学式始っているけど?」
「…………!」
 数秒遅れて頭が反応する。血が引いていくのが分かる。
「遅刻か?」
 ぐうの音も出ない程落ち込み、項垂れる。
暫くそうやっていると、頭の上でくすりと笑い声が聞こえた。
「待ってろ。校門閉めたら先生の所に連れて行ってやるから」
「え?」
 顔を上げると、校門に向かって走っている彼の後姿が見えた。
(優しいんだ……)
 何気なくそう思って先輩なんだからしかなくやっているのだろうと思い直した。
 少し、落ち込む。
 でも、彼の優しさが嬉しかった。
 さっき見た顔を思い浮かべる。心臓が少し速くなった。
(これって)
「一目惚れかなぁ……」
 15年間生きてきてそういう人はひとりもいなかった。だから少し安易ではないかと思うが、心はそれを肯定していた。
(なんて言う先輩だろう)
 胸の中が、暖かくなっていくようだった。

 

「まったく、入学当初から遅刻なんて貴女は何を考えているんですか?」
 金髪の彼に連れられ、体育館着くと案の定怒られた。
 頭の上から降ってくる説教の言葉。しかし薙刃の頭にはそんなものは入って来ていなかった。
 用があるからと早々に立ち去った彼のことを思い、想いを馳せる。
「聞いていますかっ!」
「は、はい! 勿論です!」
「じゃあわたくしは今何を言いましたか?」
「え、えーっと……」
 この説教は暫く終わりそうになかった。

 

 長い説教から解放され、薙刃はそぅっと体育館に入った。
 丁度校長先生の話が終わったところらしい。薄い頭の男性がのそのそと壇上から下りていくところだった。
後ろの方に座っている生徒がちらほらと振り向く。
出来るだけ目立たないようにこそこそと身を縮め、一番近くの席に座る。
司会の教師が面倒くさそうに式を進めていく。
欠伸を噛み殺してぼおっと座っていた薙刃は在校生からの言葉を言いに壇上に上がった生徒を見てあっと息を飲んだ。
綺麗な金髪に透き通る青い瞳は、間違いなく先程世話になった男子生徒だった。
彼は紙をざっと広げると、慣れている風体で祝いの言葉を連ねだした。
(いい声だ……)
 お決まりの文章にお決まりの文句。校長が喋れば退屈に聞こえるだろうが、彼が喋ると人を惹きつける不思議な魅力があるようだった。
 声の大きさ、息継ぎのタイミング、その他諸々の要素が気持ちよく絡まりあっている。そして彼という人間が魅力的な存在感を醸し出している。
 今まで退屈そうに聞いていた生徒たちは皆、ステージの虜となる。
 短いようで、長い時間が終わった。
 彼は最後に、自分の名と科を告げ、舞台から降りていった。
 薙刃は、彼が言った ライル=エルウッド と言う名を頭にインプットした後、ふと首を傾げた。
 そういえば彼は科を『特別進学科』と言っていた。
 ここの特進は二クラス。最高に難易度が高いとされている。そして代表に選ばれるのだから、相当実績を残しているのだろう。
「頭良いんだぁ……」
 ぽそりと呟くと、前の茶髪がこちらを向いた。可愛らしい顔を傾げてくる。
 独り言を聞かれた恥ずかしさを隠すように、薙刃はへらっと笑った。
「今の人……」
 茶色の髪が口を開く。式の途中だからか、声を潜めてぽそっと喋る。薙刃の耳には届くが、周りには聞こえない。配慮が聞いた喋り方だった。
「生徒会長……?」
「え? なんで?」
 薙刃も声を潜め、問い返す。
「代表って言ったら、それくらいしか……」
「あ、そうか」
「行ったら、会えるかも……」
 その子の言った意味を考える。入学式などは生徒会が運営しているのだろう。ならば、生徒会の代表が喋るのは十分にあり得る。
「そっかぁ、そうだよねぇ!」
 声を押し殺して歓喜する。
「会えると、いいね……」
 初めてその子は笑った。花が咲いたような、可愛らしい笑い。
 対して薙刃は、元気いっぱいといった笑いで返した。
「うん、ありがとぉ」
 もう一度、笑ってその子は前を向く。
 ふと、その子がなんでそんなことを言ったのかを考え、薙刃の顔は火が吹くように紅くなった。
(私、そんなに判りやすいの?)
 肩を突っ張り俯く。
 でも、友達のように話しかけてきてくれて嬉しかった。
 真っ赤な顔でえへへと笑うと、薙刃は前を向いて姿勢を正した。

 

「終わったぞ」
 不機嫌を絵にしたような顔で、ライル=エルウッドは舞台裏で紙を女子生徒に渡した。
「お疲れさん」
 女子生徒は瑠璃色の髪を背中に流し、その紙を丸めて捨てる。
「まったく、なんで俺が演説しなけりゃならないんだ。生徒会長はお前だろう、マリエッタ」
「あんたの方が生徒の受けがいいのよ。大体、慣れてんでしょ? いいじゃない」
 マリエッタと呼ばれたその生徒は、ライルの講義を無視して運営表に目をやる。
 ライルは溜息をつくと、生徒に次の指示をすべくその場を立ち去ろうとした。
「ねえ、ライル」
「あん?」
「なんか、いいことあったの?」
「は?」
 てっきり入学式に関してのことだろうと思っていたライルは、突然の問いに眉を寄せる。
「いや、いつもイラついてるあんたがなんか楽しそうな表情をしてたから」
「なんだそりゃ」
 なんにもない、と適当に投げ返し、会話を終了させる。
 楽しみの独り占めはずるいわよー、と後ろから声が聞こえたが、ムシ。
 外に出る。
 春の風が火照った顔に気持ちよく当たる。辺りを見回し、先ほどの女生徒が無事体育館にはいったことを確認し肩を降ろす。
 自分の顔をじっと見て驚いたように動きを止めた少女。遅刻を指摘すると、これ以上ないほど落ち込んだ。きっと思ったことがすぐに顔に出る性質なのだろう。表裏のなさそうな感じの子だった。
「てか、あそこは驚くところなのか?」
 自分を見て動きを止めたことがさっきから喉に痞えたように引っかかっていた。
(あんま外国人を見たことなかったんだろう)
 日本はあまり外国人に対して耐性がないから。
 そう思って彼女との会話を思い出す。
 屈託ない笑みが純粋に可愛いと思った。
 また、会えるといい。自然とそう思えるような子。
ライルは大きく伸びをして、もう一度準備部屋に入った。
 

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