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こんな日もあるさ
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晴れの国在住。
最近”腐”の道に進みつつある女子
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2009/08/27 (Thu)

 第二話です。
ここまではここまではlogでもうpしてるので もう見たよ という人も多いと思います。
でも続き物はやっぱりうpしときたかったんで。
くどくてごめんなさい。
つづきからどうぞ。


 

 


 温かい。
 皮膚越しに伝わってくる。
 遠く聞こえる声。
 遠のく意識の中、天使を見た気がした。

 

 

 

 

  [2]手負い猫

 コチコチと時計の針の音が響く。
 ニールは大口を開けて欠伸をすると、眠たげな目を擦って時計を見上げた。
「もう3時か……」
 夜明けには早いがこれから寝ようにももう遅い。あれから少年を医者に見せると、家に連れ帰りそれからニールはずっと看病をしていた。
 高熱と、疲れ。栄養失調に肺炎。何をどうすればこうなるのかと医者に問われ、曖昧に首を振った。実際ニールは彼のことについては知っている事がひとつもない。もしその場にニールが居合わせなければ、ニールが彼を医者に連れて行かなければ、おそらくこの子供は死んでいただろう。
 夜遅くまで点滴と解熱剤で落ち着かせてから、ようやくニールは彼を連れて家に帰宅した。落ち着いた、といっても子供は一向に目を覚まさない。時折汗に濡れた身体を拭い、氷に浸したタオルを当てる。自分の食事もまともに摂らず、ニールは彼の生存を祈った。
 彼の肩には、なにかよく判らない紋様が焼き鏝で押された後があった。医者に、この子を連れているのは良くないかもしれない、と揶揄された。「じゃあ、どうするんだ」と問うと、言葉を濁して「好きにしろ」といった事を言われた。大人はいつもそうだ。
「早く目を覚まさないかなー」
 苦しそうに息を吐く子供の頬をタオルで拭い、ニールは軽く息を吐く。
 なぜこの子供を気にかけるのかは判らない。『目の前で倒れられたから』。そう言われればそうだが、彼を看病していて、もはやそれだけではないモノが気持ちの中にある。
「早く目を覚まさないかなー」
 時折上がる声に応えるように子供の手を握り、ニールはもう一度呟いた。

 

 その目覚めは本当に唐突だった。
三日経っても一向に目を覚まさないその子供は、なんの前振りも前置きもなく、いきなりその真っ赤な眼を全開まで開いた。
 驚く間もなく彼は起き上がった。
「おい、まだ無理すると……」
 ベッドから飛び降り駆け出そうとする彼はドアの前で膝を付く。言わんこっちゃないと、眉を寄せて近づく。激しく上下する肩を掴もうとした時、殺気にも似た形相で睨まれ、体中を使って跳ね除けられた。
「お、俺に触れるなぁ!」
 掠れた声で叫び、痛めた肺が悲鳴をあげる。
 気分が悪そうな咳をする。慌てて駆け寄ろうとすると、果物籠の中にあった果物ナイフを手に取り、切っ先をニールへと向ける。
「近づくな!」
 まともな状態では目を覚まさないだろうとは思っていたが、初めての完全な拒絶にしばし言葉を失う。
 ニールはその人当りの良さからあまり疎まれた事はない。恋愛の縺れや他愛ない小競り合いは何度も経験したが、こういった、存在を拒絶される事はなかった。
 呆然とニールが立ちすくんでいる間も、子供は必死で立ち上がり、足を縺れさしていた。
「おい」
「来るな!」
「うん、解った」
 ニールの言葉に彼は眉を寄せる。怪訝そうに振り向くと、ニールは微笑を浮かべ手を上げた。
「触らない。近づかない。だから、今は休め」
 ニールの言葉に理性を取り戻したのか、今度は感情を潜ませ、跪いた状態からじっとニールを見詰める。
「俺は、お前を死なせたくなかっただけなんだ。勝手に連れてきたのはすまなかった。でも、今お前ヤバイから。寝てないと、本当に死んじゃうぞ?」
 最後は少し冗談めかしたが、冗談ではすまないくらい少年の身体は衰弱していた。こんな場所で、あんな薄着で雨の中を歩いていたのだ。今までの生活も悪かったのだろう。肺炎と栄養失調で本当に一度心臓は止まったのだ。
「俺はお前を死なせたくない。触られるのが嫌なら触らないから。ベッドに戻れ」
 じっと、じっと飴色の瞳を動かさず、少年はニールを観察する。そして悪意がないと分かったのかそろそろと寝床へと進み始めた。
 今にも倒れそうだが決して触れることを許さない瞳でニールを睨む。ニールはその瞳の奥に強い意志が見えた気がした。何が彼をそこまで拒ませるのだろう。触れてはいけない。しかし、彼の奥まで触れたい。
 少年はベッドの中に一度入り、眉をしかめた。
「……どうした?」
 腰の辺りに坐り、問いかける。
 もぞもぞと居心地の悪そうに身体を動かし、少年はぽつりと言った。
「柔らかすぎる」
 その回答の意味が判らず首を傾げる。少年は先ほど手にした果物ナイフをなにか重要な物の様な雰囲気で握りこんだ。
「おい! 危ないぞ」
「使わないから、こうさせてくれ」
 そのまま目を閉じる。
 しかし呼吸は安定せず、固くなった全身を猫のように丸めゼエゼエと力ない息をする。
 つい身体を撫でようと手を伸ばしそうになる。何度も手を伸ばしかけ、首を降って元に戻す。
 横になってがいるが、一向に眠ろうとしない彼に、ニールは空気に耐え切れず、会話をしようと口を開いた。
「お前、名前はなんて言うんだ?」
 もぞ、と身体を動かしかすれた声が面倒くさそうに答えた。
「名前なんて、好きに呼べばいい」
 あまりと言えばあまりの解答に、しばし唖然する。
「好きにって……。自分の名前、気に入ってなかったのか?」
「……別に」
 性格以前の問題だ、とニールは頭を抱える。
(好きに呼べって、でも呼び名がないと苦労するよな)
 いままで呼んだ本の中から選ぼうかとも思ったが、変なイメージになりそうなので考えを改める。
 と、不意に一つのイメージが頭の中に浮かんだ。
「――刹那」
 少年が首だけを動かしてニールを見た。ニールは目を細め、少年に照れ臭そうに笑いかける。
「刹那。じゃダメか?」
 そう言って手を伸ばす。一瞬身体がピクンと跳ねたが、睨まれただけで拒まれることはなかった。
 髪を撫でてやると、じっとニールを見ていた少年は小さく咳混んだ後ぽつりと言った。
「構わない」
 素直に撫でられるままだった刹那は、今度は逆にニールに問うた。
「あんたは? なんて名なんだ」
 少し考えてた後、ニールは悪戯を思いついた顔で笑った。
「刹那が付けて」
「……は?」
「刹那は俺が付けたんだ。俺には刹那が付けてよ」
 ごろんと刹那の隣に横になると、刹那はざっとベッドの端に逃げる。
「せ~つな」
 じっと警戒したようにニールを睨む。ニコニコと楽しそうな笑みを向けてくるニールに、刹那は布団に顔を埋め、言った。
「……ロックオン」
「へ?」
 真っ赤になった顔でニールを睨むように見る。
「あんたの、名前」
「は? あ、ああ!」
 今更ながらに思い出したように頷く。
「ロックオン、か。うん、なんか気に入った」
 笑みを深めるニールーー改め、ロックオンはベッドから起き上がり、大きく伸びをした後刹那の頭をぽん、と叩いた。
「んじゃ、刹那。これからよろしくな」
 刹那は珍しいものでも見るかのように目を瞬かせ、ぷい、と横を向いた。

 

「刹那、何か食べたいものないか?」
「刹那、身体拭いてやるよ」
「刹那、寒かったら言えよ」
 刹那がロックオンの家に来てから数日がすぎた。
 最初は彼はベッドの隅でうずくまって動かないか、苦しそうにベッドに横たわっているかのどちらかだったがいくら邪険に扱ってもロックオンはなにが嬉しいのか楽しげな笑顔で刹那の部屋を訪れた。
 と、言っても元々ライルと一緒に使っていた子供部屋の下のベッドの部分に刹那を寝かしているので、寝る時は刹那と同じ部屋になる。
「刹那、今日デパートで子供服買ってきたんだ、サイズ合ってるか確かめたいから、着てみてくれないか?」
 ちょっと出てくると、言葉を残して家を後にしたロックオンは、一時間程で大量の紙袋と共に帰宅した。
 今まではされるがままに与えられた食事をし、与えられたベッドを使った。『死なせたくない』その言葉は真実らしく、ロックオンは刹那を全身全霊をかけて看病に徹した。
 ロックオンは学校という所に毎日行く。その間は何かあったらいけないから、とわざわざ使わなくなった簡易の携帯端末を線に繋げて刹那に使い方を懇切丁寧に教えた。もっとも、刹那がそれを使うことはなかったが。
 ロックオンがどんな人物か。
 刹那は彼と一緒にいる間じっと彼を見つめた。観察だ。
 刹那の故郷では相手を知れば知るほど有利になれる。
 しかし今現在も、刹那はロックオンがどんな人物か認識ができていなかった。いや、認識できていないというより、その事実を受け入れられなかったのだ。
 刹那に対して、彼は悪意を持っていない。むしろとても貢献的だ。
 刹那としては彼に助けられたことから何か対価を要求されるかと気が気ではなかったが、その気配も、ない。
 刹那は下段のベッドの奥に座り不審そうな瞳でロックオンを見る。当のロックオンはというと、大荷物をうれしそうに店広げをしている。
「大体のものはライルのお下がりになるけど、いいよな? でも歯ブラシはやっぱ共有は嫌だろ? ちゃんと買ってきたぞ。刹那の好きなライトブルー! そして極めつけは子供用歯磨き粉りんご味! どうだ、完璧だろう」
 聞いてもいないのに勝手に一人でしゃべっている。しかしちゃんと頭には入っているので一つの事柄が気になった。
「……俺はここには住まないぞ」
「あれ? そうなの?」
 目を丸くして素っ頓狂な声を上げる。
「実家があるとか? どこら辺? 自力で帰れる?」
「帰るところは、ない」
 刹那の答えを聞いたロックオンは、寂しそうだった表情をがらりと変えて明るくなる。
「じゃあやっぱり。俺は構わないからここにいろよ」
「そこまでしてもらう義理はないはずだ」
「刹那の為じゃない。俺の為だ」
 一瞬悲しそうな顔をした後、前の表情が嘘のように楽しそうな顔でロックオンは刹那に近づいてくる。刹那はびくっと身を竦ますと、刺すような視線でロックオンを睨む。
「うりゃ」
手も触れようかという距離まで近づくと、ロックオンはがば、と刹那の小さな体を抱きしめた。
「お、おおおおっれえええれれれ!」
普段触れるなと言っていたので、ロックオンもそれに了承していたので、この行動は刹那にとってかなり衝撃的だった。
思わず声が裏返る。
ロックオンはちゅ、と音を立てて頬にキスする。刹那は誰が見ても判るくらいに顔を真っ赤にし、目を白黒させた。
「いいいいい……? おおままま」
 ロックオンはそんな刹那を微笑ましそうに眺め、隣に落ち着いて腰を下ろした。
 頭は抱いたまま、刹那の頭をくしゃりと撫で付ける。少しは落ち着いた様子の刹那は、頬に手をやり、そのまま手とロックオンを交互に見た。
「……いまのは……」
「ん? キスのことか? もしかして、はじめてだった?」
「いや……」
 しばらく考えるように手を眺める。ニコニコと笑っていたロックオンは、今の会話で重要なことに気づいた。
『もしかして、はじめてだった?』
『いや……』
 否定された? 
 ロックオンにとっては頬であろうとキスは初めてだろうと踏んでいた。それが、否定された。
「刹那ぁ――――ッ!!」
 思わず勢い間近に刹那の肩を引き寄せ叫ぶと、刹那の目に恐怖の感情がともり、右のストレートが飛んできた。
 見かけに伴わない強力なパンチに打ちのめされ、脳震盪を起こしかけた。刹那はすばやくハムスターのように毛布に包まると、ベッドの端による。毛布の隙間から、不信に満ちた眼差しを向ける。
「ごめん、刹那ごめん」
 痛い頬を押さえつつ必死に謝る。じっと観察するようにロックオンを見ている。そっと近寄ると音を立てて後ずさる。
「刹那、ごめん。もうしないから」
 よくよく眺めると、少なからずその瞳には恐怖が見て取れた。
(やべえな……)
 ロックオンは小さく舌打ちをして頬を掻いた。
 今まで徐々に慣らしてきたのが一気に元に戻ったようだ。
 こういう時は無理に近づこうとせずそっとしとくのも手だ。ロックオンは息をひとつ吐くと買った物を片付けにベッドから這い出る。
 服にコップ、歯ブラシなどなど、紙袋から出てくる生活用品の数々。
 ロックオンがごそごそと服を片付けていると、もそりと後ろから音がした。
 見ると刹那が少々興味を示したようで、こっそりと毛布の端を掴んで覗いている。
 くすり、と笑ってそのまま作業を続ける。一枚ずつ服を取り出す度に後ろでそわそわと気配が動く。
 ちらりと目だけで後ろを向くと、じっと覗いていた刹那と目が合う。慌ててさっと逸らす刹那を微笑ましく思いながら、服をちょっとだけ見せて笑う。
「着てみるか?」
 ピクンと反応して毛布に潜ってしまう。慌てた感じがとても可愛い。
 くすくす笑いながらまた収納の作業を開始する。また後ろで動く気配がある。
 懐く前の猫のようだと思った。
 思い出したように、ロックオンは声を張った。
「刹那!」
 後ろで少し反応がある。
今度は首を動かして刹那を見る。柔らかい微笑が刹那を捕らえた。
「これからも、ウチにいろよな」
 一瞬きょとんと不思議そうな顔をし、さっきの会話のことだと気付く。少し憮然とした顔で刹那はこそっと呟くように言った。
「お前が、望むのなら……」
 ロックオンはその言葉に満足そうに笑うと、新しい家族の荷物を持って立ち上がった。


 Continued..

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