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最近”腐”の道に進みつつある女子
マイペースに更新していきます。
ずいぶん前に告知したオフで作ってただむおの学園編です。
元は『After School』というタイトルが付いてたのですが、学園編との一つにまとめました。
ぶっちゃけ放課後がどうしたよ、というほど意味のないタイトルだったのでまあ、いいや的な。
正直毎回コンスタントに出すことができていなかったので思案の末にサイトに移行することに決めました。
なのでこの後通販のページを作るつもりですがその中にこの作品は入れない予定です。
ですがわざわざお金を出していただいた方が不快な思いをしてはいけないので、募集で簡単な話を小冊子でお送りしたいと思っています。
イベントでお会いできればいいのですが都合が合わなくてこれない><という方は学園編買ったんだよ、と一言メールください。その折に住所、郵便番号、名前ももれなくご記入ください。
この募集は本当に任意になりますので、いらねーよという方はゴミ箱にポイしといてください。
あ、郵送料はいりませんので。
あくまでごめんなさいの品物なので。
ブログだけご鑑賞の方は sunligit夕hotmail.co.jp の夕を@に変えて送信ください。
携帯電話の方はヤフーメールで返信があると思います。
ではでは前置きはこのくらいで本文どうぞー
[1] 砂糖たっぷりの卵焼き
「ライル、話がある!」
切迫した声に何事かとライル・ディランディは箸を咥えたまま教科書から顔を上げた。
そこには双子の兄、ニール・ディランディの姿があった。彼は今まで見たこともないような真剣な顔でライルにお願いのポーズをとっていた。
「ちょ、なに? 兄さん近いって」
ずずい、と間近に迫る同じ顔を、ライルは鬱陶しそうに遠ざける。
「ライル、とりあえず、何も言わずに来てくれ」
「なんか言ってから行こうと思う」
「そんな殺生な! いいから来てくれよ!」
この兄はお調子者だが人に優しく、空気を読んで場を和ませる。しかしその兄が周りから見てもよく判るほど慌てている。よっぽどの事があったのだろうと、箸を置いて立ち上がろうとすると、ニールはその手を掴んだ。
「弁当は持ってきてくれ。ついでにコーヒーと教科書も」
「は?」
怪訝な顔をすると、すでに自分の弁当とコーヒーを完備して、ニールはそわそわしながらライルを急かした。
「さ、ライル。昼休みは短いんだ。早くしないと刹那が食い終わっちまう」
「……刹那?」
おそらく使われ方から人の名前。そこまで考えて、ライルはふとひとつの事に思い当たった。
簡単に弁当箱をハンカチに包み、ペットボトルのコーヒーといつも読んでいる教科書を手提げに入れ、ニールの後を追った。
廊下にディランディ兄弟が出ると、何処からともなく視線が降り注ぐ。ニール・ディランディ。ライル・ディランディは親しみやすさとそのルックスから、去年の秋の文化祭で統計された『彼氏にしたい男子生徒ベスト5』の1位2位に君臨した兄弟で、この学校では知らない者はいないという有名な双子である。その端正な耳に心地よいバリトンで、まるで人気俳優のような容姿をしているが、それを笠に着ずに物腰柔らかな親しみやすいニールと、運動神経もさることながら成績でも上位を常に確保し、海外の大学への国内推薦が決まっているちょっとニヒルなライル。しかし2人とも彼女は作らないことでも有名なこの兄弟だった。
廊下を早足で進むニールに、ライルは今思い立った事を単刀直入に切り出した。
「兄さん、もしかして好きな奴でもできた?」
「お、よく判ったな」
「で、昼に一緒に誘おうと思ったけど一人じゃ心細いから俺も一緒にってとこか?」
「さっすが進級試験主席のライル君。まさにその通りだ」
カラカラと笑うニールに腕を引っ張られ、ライルは皮肉気にため
「そんなん、兄さんが笑顔で誘えば女子なんて一発だろ。この1位」
「お前、ランキングで2位だった事密かに恨みに思ってねえ? まああいにく、そんなに簡単じゃねーよ刹那はな」
「……その刹那って、何年何組だよ」
「もう可愛いぜー、刹那はな! ほんと可愛い!」
「質問に答えろよ」
コメカミを押さえながら呟く。そんなライルを少しも見ずに、ニールは歩調を速めた。
行き着いた先は屋上だった。遮る物も何もなく、夏は直射日光が、冬は強烈な北風が、と生徒からは敬遠されがちな場所だ。
ニールがノブを回すと、重金属の重そうな音の後、軋みながらドアが開いた。
まだ春の香りを含んだ風が校舎の中に舞い込んで来る。桜の花びらと共に吹き込んできた風に目を眇め、日光を避けるようにライルは手を翳した。
光の中に、一人少年が座って何かを食べている。
「刹那!」
腕が強く引っ張られる。よろけるように足を動かすと、徐々に彼の姿が見えてきた。
濡れた鴉の羽のような漆黒の髪に夕陽色の瞳。何が気に入らないのか、笑顔を忘れたような仏頂面で購買で買ったららしきパンを頬張っていた。
「せ~つな~!」
花が飛びそうな程幸せそうな顔をして、ニールは刹那に駆け寄る。
逆光にも慣れ、クリアな視界で刹那をまじまじと見たライルは、楽しそうに刹那に話しかける兄を見た。
「刹那、俺の事覚えてるか?」
「……ニール・ディランディ」
「そうそう! で、こっちが前話した」
「ライル・ディランディ?」
「そうそう! 約束したよな? 一緒に飯食おうって。お兄ちゃん約束どおりきたぞ~」
「ちょっと、兄さん」
ひとりで盛り上がっているニールの裾を引くと、面倒くさそうに振り返った。ライルは震える指で刹那を指差すと、信じられないような声で言った。
「……刹那?」
「うん」
「この子が?」
「他に誰かいるか?」
その答えを聞くと、少し考える顔をした後、ふむ、と顎に指を当てた。そしてその数瞬後。
「この親不孝モノが――――――――――――ッ!!」
「ひでぶっ!」
ニールの右頬にライルのストレートパンチがクリーンヒットした。妙な言葉を発した後、ニールは宙を舞った。
「男と言う事はまだいい!」
「いいのか!?」
「しかし事欠いて小学生に手を出すとはどういう事だ! 犯罪だぞ!」
「違う! 刹那は中等部2年だ!」
「一緒じゃボケー!」
もう一度今度は反対頬に拳がめり込んだ。
「刹那っ。助けてっ!」
ほうほうの体で刹那の後ろへと回る。驚いたような顔でニールを見た後、刹那は慌てたようにライルへと視線を上げた。
「子供に頼るなっ」
「……俺は子供じゃない」
声変わりもしてないような声で呟くと、不満そうな顔でライルを見上げる。しばらくライルも刹那(の後ろのニール)を睨むように見下ろす。
じ、と刹那が無表情でライルを見上げる。ライルは刹那を観察するように見た
刹那は中学2年にはとても見えない顔と体躯をしていた。大きく力強い瞳はルビーの原石のよう。ぴんぴんと跳ねた髪は猫の耳を連想させた。中東の出なのか、褐色の肌に相まってこれから成長すればかなりの美男子に属するのではと思われた。
下目線からじっと見つめてくる刹那を見ているうちに、ライルの中にあらぬ感情が小さく芽生えた。
微妙な表情の変化を見止めて、ニールに変化があった。
「おい、ライル。いま『刹那が可愛いかも』なんて考えなかったか?」
心中を付かれライルは、慌てて刹那から目を逸らした。きょとん、とした様子で刹那が首を傾げる。ニールは刹那を後ろから抱き込むと、自分の胸の中に収めてしまう。驚いたように、刹那が硬直する。
「これ、俺の」
その言葉を聞いたライルは少しむっとした顔で刹那の隣に腰を下ろす。そして彼の腕を取ると自分の中に引き込んだ。
「じゃあ、奪うぞ」
視線が絡み合い自然に険が増す。じっと睨みあっていた中で、刹那はただどうしようもなく訳が判らずただ布越しに触れ合う体温の感触にどうしようもない嫌悪感を抱いていた。人に、触れられるのは好きではない。いつもだったら振り払っているところだ。しかし、何故かそれができず体は硬直したまま動かすことができない。
カタカタと小さく震えだしたところで、ニールが刹那の異常に気付いたらしく、慌てたように刹那の顔を見た。
無表情だが青ざめているその顔にライルも気付き、二人同時に彼を放する。
「刹那、ごめん」
ニールが刹那の頭を優しく撫でると、肺の中を空にするかのように大きく息をついた。
「えっと、どういうこと?」
異常は判っても事情が飲み込めないライルが尋ねる。
「刹那は人に触られるのが苦手なんだって」
「早く言えよそれ!」
ライルに声に、刹那がビクリと反応する。それに気付いたライルはごめん、と刹那に謝る。
「……大丈夫だ」
小さく言うと、刹那は座ってフェンスに凭れ掛かった。そしてそのまま昼食を再開する。
「そういや、早く昼飯食わねえと」
「だな」
弁当箱を包んだハンカチを開きつつ、ふとライルが横を見ると、ニールの方が若干刹那との距離が近いことに気付く。ちょっと、面白くない。
鼻歌を歌いながらニールがふと横を見ると、徐々に、徐々にライルが刹那との距離を縮めていた。額に、皺ができる。
もふもふと焼きそばパンを頬張っていた刹那は、気が付くと両端の先輩たちに挟まれ、身動きが取れなくなっていた。頭の上では火花を散らすような目の動きが見て取れた。
「うわっ」
「げっ」
思わず両側の頬ふたつに遠ざけるように両腕を突っぱねた。ぐき、と彼らの首が変な音を立てる。
「…………」
黙ったまま抗議の目線を二人に送る。双方がごめんと同時に手を立てた。さすがは双子。まるで鏡を見ているようだ。
「あー!!」
突然ライルが悲鳴染みた声を上げた。ニールと刹那が驚いて横を見る。するとライルが涙目で弁当箱の中を凝視していた。
「お、俺の弁当が……」
見るとご飯は端に潰れるように斜めに寄り、おかずは滅茶苦茶に潰れあっていた。
「弁当箱持ったまま人の事殴るからだ。ざまあみろ……って、うあー!」
刹那がニールの弁当箱を見ると、同じような惨劇が彼にも起きていた。
「兄さんもぶっ飛んでたからなぁ」
「……ライルのせいだ」
「食べられれば問題ない」
刹那の言葉に双子はため息をつき、ようやく箸を手にした。なんで食事をするだけでこんなに時間がかかるんだろう、とすでに食べ終わった刹那はミルクを飲みながらふと眉を寄せた。
ふと甘い匂いが漂ってきた。なんだろうと刹那が横を向くと、ニールがポテトサラダまみれになった卵焼きへと箸を刺していた。
その黄色い塊を、刹那は興味深そうに見つめた。
刹那の視線に気付いたのか、ニールは卵焼きを食べようとした寸前で手を止めた。
「これ、気になるか?」
笑顔で問いかけてくるニールの目をはっと見て、赤くなって横を向いた。
「刹那、あーん」
卵焼きを差し出すニールに、刹那はどうすればよいか判らず、おろおろとライルを見た。
から揚げをつまみながらライルは箸を卵焼きに向け、もごもごと口を動かした。
「兄さんの卵焼きは絶品だぞ。食べてみろよ」
おろおろと辺りを見渡す刹那に、ニールは笑みを深くした。
「ほら、刹那。口開けて。あーん」
躊躇いながら小さく開ける刹那の口に、そっと卵焼きを入れる。
味を確かめるように口を動かしていた刹那の目が次第に煌きだす。
「うまいか?」
問うニールに刹那は輝いた顔でこくこく頷く。
「そうかー」
黒い癖毛に手を突っ込みぐしゃぐしゃと撫で回す。手を払われる事はなかった。
ふるふると刹那が頭を振った。そこでようやくニールは手を離した。
「もうひとつ食べるか?」
ニールが箸で割ったもう半分の卵焼きを差し出した。今度はなんの抵抗もなく口を開く。
口に入れてやると、よっぽど美味しかったのか口の周りを舐めるように赤い舌を除かせた。
ペロペロと唇に残った味を堪能していると、ジリリ、と、電子音が鳴った。
それは言うならばとても古めかしい、目覚まし時計、いやいまは博物館などでしか見受けれられない幻の黒電話の呼び出し音のように思えた。
双子が訝るように目と目を合わせる。刹那が慌てたように携帯端末を取り出し、会話ボタンを押した。
会話中のアイコンが表示され、相手と思われる少年が姿を見せた。左上には『沙慈・クロスロード』という人名が。少年の名だろうか
「俺だ」
端的にそれだけ言う刹那に、沙慈と思わしき少年は苦笑するように顔を笑みの形にした。
『もうちょとさ、なんかないの? 逆に電話をしたらオレオレ詐欺にかけちゃったって心境だよ』
「他に、とは?」
『いや、いいよ』
二人の会話を見つめる中、ニールとライルは少々意外そうな顔で刹那を眺めた。
(友達、いたんだ)
(らいしな)
口だけで、会話をする。
刹那を見ていて、どちらかと言えば静寂を好むタイプのように見えた。一匹狼とでも言えば言いのだろうか。群れることを嫌い、ひとりきりにいるイメージが強かった。あまりしゃべる事もない。しかし二人はそのイメージがとても惹かれるものがあったのだが。
『今日のことだけど、最終確認ね。7時半寮の食堂に集合。特にいるものはなかったと思うけど、カメラなんかあったら記念になるよね』
どうやら刹那は寮生で、今晩なにかあるらしい。ディランディ兄弟は近くのアパートに二人で暮らしているので寮の中の事は未知の世界だ。
『主役なんだから、遅れちゃだめだよ。って、キミなら心配ないか』
どうやら刹那の何かを祝うらしい。誕生日と言ったあたりだろうか。
『あ、そうだ。他に誰か誘いたい人とかいる? 寮生以外で』
「誘いたい人……」
途端に刹那の肩に手が置かれた。ビクリ、と反射的に背中に電流のような悪寒が駆け抜けた。決して触れられた事からの嫌悪感ではない。肩に置かれたてもとても優しい。
しかし、心の中には言いようの知れない不快感が留まりつづけていた。
振り向いてはいけない。
「特にいない」
「刹那―!卵焼きまだあるけど食べるよなー!?」
無視して会話を中断しようとすると、隣から絶叫にも似た大声が聞こえた。沙慈の目が驚いたように見開かれる。
「刹那のだ~い好きな砂糖たっぶりの甘~い卵焼きがまだ残ってんだけどなぁ!たべりゅっ!」
「黙れ」
ほとんど棒読みで大声を撒き散らしていたニールの鼻筋に刹那の裏拳がヒットする。手首のスナップがかなり効いた。
『刹那、今』
「なんでもない。虫がいただけだ」
『え、でも……』
『ねえ沙慈! 今ディランディ先輩の声しなかった!?』
『ルイス声でかいよ』
急に画面に金髪の髪の長い少女が現れる。好奇心旺盛そうな目を大きく見開いて今度は刹那に捲くし立てる。
『刹那、今ディランディ先輩傍にいる!?』
「えっと……」
「いますよー。兄と弟両方揃っております。兄さんはいま失神中だけどね。ところでお譲ちゃん今日寮でなんかあるの?」
営業スマイルよろしくといった風にライルが刹那の横に顔を出す。画面の向こうでルイスの歓声が上がった。
『なんで~? なんで刹那なんかがディランディ先輩と?ねえ、沙慈なんでー?』
『僕が知るわけないじゃん』
『その位知っときなさいよ! 沙慈のバカ!』
『え~!?』
ライルの眉に皺が刻まれる。
「えーっと、お譲ちゃん?」
『ライル先輩! 今日の夕方空いてますかっ!!?』
「ええっ!?」
困惑したような顔をするライルに、刹那が渋面を作ってルイスに語りかけた。
「おい、まさか……」
「……ぅ~?」
いきなり反対側から唸り声にも似た声が聞こえた。
「お、兄さんお目覚め」
『ニール先輩までっ! 刹那どうやってナンパしたのよっ!?』
「沙慈、話が進まない」
「仕方ないよ、刹那」
彼女の扱い方を一番心得ている彼が仕方ないと言っているのだからしかたないのだろうと、納得し難くも納得する。
そうしている間にもテンションが絶頂まで到達しているルイスはニールとライルを交互に見て熱いため息を吐いた。
『ちょっと、ルイス』
有名で人気な先輩だが、そこまでのぼせ上られては一応彼氏の立場の沙慈の立場がない。コツン、と頭を小突くと、少し不服そうな顔をして黙った。
『で、ただの確認だったんだけど……』
すっかり長話になってしまったが。
「そうそう、それそれ」
「今日寮でなにかあるの? 刹那絡みで!」
最後を強調するニールに刹那は目を見開いて彼らを見た。
『えっと、刹那が転校してきたのはご存知ですよね? それから丁度今月の七日が誕生日だって言うから歓迎会も兼ねてパーティーでもしようかって』
「俺はいらないと言ったんだが……」
渋面を作ってため息共に苦言を吐き出す刹那をなだめ、沙慈は双子に向き直った。
『良かったら、お二方もご参加しませんか? みんな喜びますよ』
「「いいの?」」
先程から抜群のタイミングで両声をそろえるニールとライルに、笑みを深くして彼は頷いた。
『五時までに寮監の先生に追加人数を言えば良いんで。大丈夫ですよ』
「あ、でも兄さん。今日バイトあるんじゃなかったっけ?」
「意地でも休む。こんなイベント放っておけるか」
ニールの言葉に慌てたように反応したのは刹那だった。
「ニール、大事な用があるんなら……」
皆まで言わさず頭に手を置く。そのまま彼の癖毛をわしゃわしゃとかき回した。
「ニール!」
何度も刹那の頭をかき回した後に、ぽんぽんと数回頭を叩いた。
「心配無用! これでも今まで真面目でやってきてるからな。店長とも仲良いし、何とかなるでしょ」
「……バイトって、なにやっているんだ?」
頭を直しながら上目遣いに視線を向けてくる。一見不満そうな顔だが、その実ニールの事を案じてくれているとわかるような顔で見つめられ、ニールは思わず抱き締めたくなった。
「シューティングセンターの講師。大会に出たりもしてるんだぞ」
「だったら、やっぱり待ってる人が……」
「……刹那は俺が行くのが嫌なのか?」
突然悲しそうな顔でそういわれ、虚を突いたような顔をする。
「俺の事、嫌い?」
「~~~~っ!!」
涙目でそう言われ、刹那は言葉を失くしてしまう。
隣では嘘泣きと見破ったライルが呆れ顔で頬杖をつき、まだ通信中の端末の向こうでは、二人の空気に何を言っていいか判らない沙慈がぽりぽりと頬を掻いていた。ちなみに、ルイスはすっかり飽きてライルと会話した事を自慢しに他の学友のところに行って今はいない。
「……刹那」
懇願するような流し目で刹那を見ると、彼は顔を真っ赤にしてぷい、と横を向いた。
「勝手にしろ」
(か、かわいい~!)
自分でその仕草を誘導しておいてなんだが、ニールはその刹那の仕草がツボに入ったらしい。含み笑いを隠しながらプルプルしている。
「じゃ、じゃあ二人追加って連絡しておきますね。それより刹那、次授業ないの?」
この学園は大学はもとより、高等部、中等部と完全単位制だ。さすがに初等部はきちんとカリキュラムが組まれているが、中学からは数多い授業の中から興味のある者を好きに選択できる。もちろん、必修の課目は取らないと卒業できないのだが、選択科目のほうが圧倒的に多い。
しかも似たような授業を違う学期、学年で被る事もあるので大抵食堂が混雑する昼食時は四時限か五時限目を抜かす生徒が多くなってくる。
しかし刹那はまだ転入したてで履修しなければいけない科目が盛り沢山にある。
沙慈とルイスは既に五限目は履修科目はなく、ライルとニールは受験生なのですでに卒業必修科目の単位は修得しているので、後は個別に行う受験勉強だけだ。
慌てた刹那が時計を見ると、既に予鈴も終わった時刻になっていた。
「うわ……」
まだ弁当を広げている二人を見て、心底早く自分だけ食べておいて良かったと安堵した後、刹那は二人を無視して足のギアを全開にした。
神速の如く突風を吹き巡らせて刹那が立ち去った後、ライルはさっさと弁当を平らげすっかり冷めたコーヒーを煽った。
「相変わらず食うの速ぇなぁ。もっと噛んで食えよ。消化不良を起こす」
その言葉に明らかに面倒くさそうな顔で返事をした後、少し黙ってもう一度ライルは口を開いた。
「兄さん、刹那の事、本気?」
「当たり前だろ」
茹でたブロッコリーを口に運び、事も無し気にニールは答える。その答えに、ライルはふん、と小さく鼻を鳴らしたけだった。
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うわぁ、ずいぶん前に書いたものなので恥ずかしい><
矛盾点以外は修正してないので本当にうわあって感じです。
基本的にせっちゃんが愛されてる話になります。
うん、いつもどおりだね
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