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こんな日もあるさ
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晴れの国在住。
最近”腐”の道に進みつつある女子
マイペースに更新していきます。
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2009/07/20 (Mon)
一本背負いは一回は出して起きたかったんです。
脳天落下型受身不可。
二次ならではですよ、こういうドつき夫婦漫才ができるのは。




つづきからどぞー

 物言いたげなリタ、なんだか不吉な笑みを浮かべるマリエッタに見送られ、ライル、ジルベルト、アルドは我が家を後にした。
 薙刃、迅伐、鎮紅がいないのは起きて来られなかったのとふてているのだろう。
「しっかりやりなさいよ」
 と、マリエッタはジルベルトの肩を叩いていたが、深い意味はライルには判らなかった。
 アルドはタダで行けると喜んでいるし、ジルベルトも嬉しそうな顔をしている。
 人の喜ぶ顔は嫌いではない。
 まあ、これでよかったかな。と、ライルも小さく微笑を浮かべた。 
着いた先はこの間行ったような「まさに温泉街!」といった体ではなく、こぢんまりとした民宿だった。お世辞にも美人とはいえない女将は、ジルベルトの見せた招待券を見せると、にこりともしないで部屋へとライルたちを招きいれた。
「やっと落ち着いたな」
ライルは女将の入れたお茶を一啜りすると、誰とも為しにそう言った。
「ここは宿はあれだけど、温泉は良いらしいよ」
 ジルベルトは荷物を隅に寄せ、ライルの向かいに座る。
 アルドが部屋の窓を開けた。
「へぇ~、すぐ裏手が山なんですね。川でもあるんでしょうかね、水の音がしますね」
 アルドの言うとおり、ちょろちょろと水の流れる音がする。
 小川のせせらぎを聞きながら、小さな民宿での美味しいお茶。
(こんな旅も良いな)
 ライルはもう一口お茶を啜り、ほっと笑みを浮かべた。
「さて、ライルも満足してるようだし、温泉でも行くか」
「そーですねー」
 ジルベルトの声に、我に返るライル。なんだか二人の視線が生暖かい。
 ライルは気付いていないが、この時彼は他人が見たら引くほど至福の笑みを浮かべていた。アルドとジルベルトはライルが枯れキャラよろしくな日本オタクと知っていたので、この程度で済んだが、ライルは今、この歳にして既に初老とも言える喜び方をしていたのだ。
「え…と、顔に出てたか?」
「「なにをいまさら」」
 デュエットで返されてしまった。
 ライルは思ったことがすぐ顔に出る。これは周知の事実だ。
「とりあえず、厨房で晩酌セットを借りてくるッ!」
 ライルは高速で備え付けの手拭を掴むと、マッハのスピードで部屋から出て(逃げて)いった。
 ジルベルトとアルドはそれをそれはそれは楽しそうな顔で見送り、のたのたと風呂の準備を始めた。

 

 

 ライルが脱衣所に着くと、二人はもう入っているらしく、籠に服が入れてあった。
 木戸を隔てて話し声がする。彼ら以外にも何人か入っているようだった。
「まさか、また混浴じゃないよな…」
 トラウマが頭を過ぎる。ライルはそっと耳を傾けてみた。一応、男の声しかしない。
「よし」
 彼はボタンへと手を掛け、ひとつずつ外していき、シャツを一気に脱いだ。
 その一つ一つの動作に、温泉への期待が満ち溢れているかのようだ。
 全てを脱ぐと、腰に手拭を巻き晩酌セットを持つと入口の木戸を開けた。


――――ぶっ‼


 何かが吹く音がした。奥を見ると胸まで浸かったジルベルトが口を押さえ、真っ赤になって悶えていた。
 呆れたような顔をしたアルドがジルベルトの肩に手を乗せて言う。
「ジルさん、興奮しすぎですよ」
「ばっか、アルド! 好きな人の裸だぞ! しかも大事なところも薄布一枚だけで…ああ、生きててよかった」
「ジルさん、周りの人ドン引きしてますって」
(あー、俺このまま入って大丈夫だろうか)
 思わずそんなことを考えてしまう。しかし湯には浸かりたいので温泉へと足を進める。
 その時初めて、お湯が乳白色なのに気付いた。
「おお、すごい。お湯に色が着いてる!」
 ジルベルトとアルドの会話のせいででそこまで気付けなかったのだ。
 お湯をひとすくいすると、少し粘りがあるように感じた。
「これぞ温泉だよな」
ゆっくりと身体を沈める。
少し熱めのお湯は、疲れが溶け出していくようだった。
虫の声が聞こえるなか、ライルは晩酌セット(中身、お茶)を湯船に浮かべ、杯にお茶を注いだ。
 ゆっくりと口に運ぶ。緑茶のよい香りが、口の中に広がった。
「これぞ、日本情緒」
 至福の笑みを浮かべながら、ライルはほう、と息をついた。
「兄ちゃん温泉好きなのかい?」
 隣にいた老人に話しかけられた。ライルは笑顔で受け答えする。
「はい、二回目なんですが、この間はゆっくり入れなくて」
「そうかい、そうかい。ここのお湯はいいだろう?」
「そうですね、こんなのは初めてです」
「それにしても、兄ちゃん綺麗だね」
「あ、ありがとうございます」
 言われ慣れない言葉に少し戸惑う。ジルベルトでもそんなことは言わなかった。照れ隠しに杯にお茶を注ぎ、口に持っていく。
「で、あそこの長髪の兄ちゃんとデキてるのかい?」
「ぶっはぁあぁ!!」
 吐いた。いきなりの言葉に顔が真っ赤になる。
「な、な、何でそうなるんだ!」
 思わず地が出た。お爺さんはニコニコと人の良い笑みを浮かべる。
「照れる事はないじゃないか。かつての英雄、信長様にも蘭丸殿がいたんだよ」
「照れてない、断じて照れてない! あいつとは仕事で一緒にいるだけだ」
「な~んの話をしているのかな?」
「うあああああ!」
いきなりジルベルトの抱きつく攻撃を受け、ライルは大いに戸惑った。
背中に彼の胸が当たり、大きな手で抱きこまれ身動きが取れない。
 隣にいたお爺さんはうんうんと笑いながら頷いている。
「青春じゃのう」
「そこ! 遠い目をしてないで助けろ!」
「人を悪人みたいに言わないでくれない?」
「似たようなものだろ!」
 ふと、目の端にジルベルトの胸筋が映った。動きが止まる。
 ライルは自分の胸と彼の胸を代わる代わる見て溜息を吐いた。
「どうした? ライル」
「い、いや。なんでもない」
 不思議そうにライルの頭を撫でるジルベルトにライルは慌てて首を振った。
そして程よく筋肉のついたジルベルトの胸を羨ましそうに見る。
ライルは体力も力もそれなりにあるが、総じて筋肉と言うものには乏しい。
『貧弱』という言葉が頭を過ぎった。
「あー、にしてもやっぱり風呂は気持ち良いねー」
 そう言ってライルに身体を預けてくる。ライルは半眼で彼をねめつける。
「お前な、人もいるんだからあんまくっつくな」
 顔が僅かに赤く染まっている。頬を伝う水滴も湯水だけではないだろう。
「えー、だって」
 対してジルベルトは笑みを崩さずにライルの首筋に顔をくっつけ甘噛みする。
「ライルの全裸なんてめったに拝めないでしょ?」
「ちょ…おま」
 馬鹿なことを言うな、というのと、首を舐めるな、といのでどちらを言えばいいか悩んだ結果ライルは力でジルベルトを引き離した。
「もう出る!」
 やっぱりゆっくり湯に浸かると言うことはライルには許されていなかったらしい。

 

 

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